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美術館はモードの墓場 − 山本耀司

ロンドン初のヨウジヤマモト個展がヴィクトリア・アンド・アルバート美術館で3月中旬にオープンした。幅広く行われた宣伝効果も大きく、 一目彼の作品を見ようと世界中のファッション好きが訪れている。80点以上に及ぶキャットウォーク作品や、かの有名な写真家ニック・ナイト、クレッグ・マックディーンとのコラボレーションによって生まれた、今や伝説とも言えるカタログの数々、山本氏によって収録されたミュージックアルバムなど、過去30年間に渡る活動が回顧的視点で展示されている。また、会場入り口で手渡される館内地図を手に、思いもよらない場所に展示された作品を探しながら美術館全体を歩き回るようになっているのも面白い。

多種多様なフォーマットでの展示が魅力となっているメイン会場では、約60体のマネキンが纏った作品の綿密なディテールや絶妙なバランスを誇る仕立てなど、 観客は山本氏の作品が持つ力に圧倒されるだろう。長年のヨウジヤマモトファンの私は、トイショップにいる子供の様な興奮状態...と言いたいところだが、実際は得体もしれない欠落感を覚えずにはいられなかった。素晴らしい歴史的軌跡と作品に囲まれながら、ドキドキしない自分がいた。何かが足りない、非常に大きくて重要なもの、彼のデザインにはなくてはならない何か。答えは明白だった、展示作品は死んでいるようなのだ。時間が止まり、冷たく保存され、所謂「歴史」というストーリーに収まってしまっていた。ヨウジヤマモトのジャケットに袖を通した瞬間のある種の恍惚感や生地の柔らかさを感じた時の感動、そんな感覚が欠落していた。そこには生命というのもが影も形も無くなってしまっていたのである。

「時間をデザインしたい」と山本氏はかつてつぶやいた。彼の作品は独特の時間感覚を持っている。未来でもなく過去でもない、昨日というわけでもないし今日でもない、ただ「今」という瞬間がそこにはある。シンプルだが、ファッションに対する非常に反抗的な精神とも言える。80年代のパリでヨウジヤマモトのコレクションが発表されたとき、メディアの反応は複雑だった。過去の例が何の役にも立たず、ジャーナリストやバイヤーは彼ら自身の感覚的判断を試されるハメとなったのだ。世の中では女性が一生懸命ボディコンドレスに身体を押し込めている時代に、身体の周りで空気を持って舞い、見た事もない美しい黒のシルエットを生み出したコレクションは、ともかくショッキングだったのだ。彼の作品を笑う人あり、嫌う人あり、そして深く愛する人がいた。

今となっては、ファッションを愛するほとんどの人がヨウジヤマモトの大ファンであり、次のコレクションを今かと待ちこがれている。彼の作品が持つ、反骨精神を秘めた魅力はいつも驚きに満ちている。何も加えず、何も足さなくていい。身体に纏った作品がすべてを満たしてくれるから。ファッションは生きて、そして動かなくてはいけないのだ。

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