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庭園の中の庭園

ロンドンの夏はサーペンタイン・パビリオンのオープンなしには始まらない、と言っても過言ではない。今やロンドンの風物詩として定着したパビリオンは、仮設建築プロジェクトとして最も革新的で想像力に富んだプログラムの一つと言えるだろう。著名かつ英国で竣工済の建築プロジェクトがないこと、というユニークな条件下で選抜された建築家が、毎夏サーペンタインギャラリー前のスペースにランドマーク的なパビリオンを建設する。ギャラリー側のブリーフは極めてシンプルな実用的資料のみ。建築家は、他のプロジェクトでは実現できないような自由で実験的な発想を試す絶好のチャンスを与えられるというわけだ。「パビリオンプロジェクトは、場所が持つ意味や背景に対し情緒的、心理的、そして物理的に応じてほしいという招待なのです」とギャラリーキュレーターは話す。2011年の夏、これら全ての期待を遥かに上回るパビリオンが完成した。

第11回のパビリオンデザイナーに選ばれたのは、世界で名高いスイス人建築家ピーター・ズントー。プロジェクトは、マンハッタンの「ハイ・ライン」庭園企画で知られるオランダ人庭園デザイナー、ピエット・オウドルフとのコラボレーションで行われた。ラテン語で「囲まれた庭」を意味するHortus Conclususと名付けられたパビリオンは、物理的かつ感情に訴える体験を訪問者に与える。パビリオンは高さ5.3m、幅12m、奥行33m。ロンドンの美しい公園内に静かに佇む全面黒く塗られた木造建築内部に一歩足を踏み入れると、暗く狭い廊下が待ち受けている。建物内部をグルッと一周して繋がる通路は、外壁と内壁を区別する役割を果たしている。内壁には4箇所に開いた入り口があり、訪問者を中心空間へと静かに導いてくれる。ポッカリ開いた穴のような戸口をくぐると、そこにはもはや天井はなく、美しい庭園が俄に現れる。オウドルフによって厳選された30種以上の植物が、空に向かって色とりどりの花を咲かせ、素晴らしい香りを放っている。そこで感じる驚きと感動は、他にはない体験である。

「建築はステージのようなもので、庭園の花と光の背景幕なのだよ」とズントーは話す。小さくてヒッソリと存在するこの自然の劇場は、植物の目まぐるしい移り変わりを主役に私達を魅了し続けるだろう。

キーティング敦子

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