Art / Design

Waste Not、バービカンギャラリー

北京を拠点とするアーティスト、Song Dongの展示「Waste Not」がバービカン・カーヴ・ギャラリーで開催されている。この展示は、アーティストの母親故Zhao Xiangyuanが50年間に渡って集めた1万以上のオブジェクトで構成されている。夫を亡くしてから鬱病に悩み、モノを集めるという行為にさらに拍車がかかった母親の様子にいたたまれなくなったSong Dongは、彼女の気持ちを整理する目的も含め「Waste Not」の第一回インスタレーションを母親と共に作製した。北京で展示されたこの作品は、彼女の個人的歴史と記憶に秩序を与え、ヒーリングとしての役割も果たした。

「オブジェクトのコレクション」とシンプルに呼ばれる展示だが、典型的なイメージを覆す内容となっている。まずオブジェクトの数1万個以上、そしてそれらは全てアーティストの母親が保持していた個人的な日用品である。 椅子、箪笥、洋服、バッグ、靴、子供のおもちゃ、半分使いかけの石鹸、スーパーの袋、空のペットボトル。 彼女が使ったもの全てがあると言っても過言ではない。一つ一つ全てが使い込まれており、個人的歴史が含まれている。最初ギャラリーに入った瞬間は、とにかくモノの数に圧倒されたが、しばらくするとこれらの日用品に心を動かされるのが驚きである。キチンと並んだ数十個の、真っ平らになるまで使い切ってある空の歯磨き粉チューブの前に立った時には、何とも言えない深い悲しさに似た感情が広がった。「収集」と「執着」はお互いに極めて近い関係で属し合っていて、分けて考える事は不可能だと思う。彼女の執着心はおそらくモノ自身ではなく、モノが持つアイディアのようなものにあったのではないか。モノを集めるという事で時間をヴィジュアルにとらえる事ができ、まるで失われた時間を所有できるかのようなイルージョン。夫を亡くした後の心の穴を埋めるためであったかもしれないし、もしくは自身の存在を証明するような概念的なものだったかもしれない。

この展示でもう一つ興味深いと感じたのは、彼女がモノを集めだした時期が1966年の文化大革命と同じという事だ。多数の死者を出し、国内の文化/歴史的破壊を押し進め、経済状態にもネガティブな影響を与えたこの革命を生き延びる事と、モノを集める事、この二つは深く関連しているような気がする。7、8冊のThe Little Red Bookと呼ばれる「毛主席語録」が赤いリボンで束ねられて展示の一部として置いてあった。貧困時代をサバイバルするためにモノを無駄にせず、使えそうな物は全て保持することにはじまり、社会全体が過去の遺産を破壊する事を強制された中で個人的な過去を収集し保存し続けた彼女。勇気があると私は思う。意図的ではなかっただろうと思うが、社会の均質化が強制的に進められている下での、一人の人間としての抵抗と私には感じられた。個人の歴史と生き方がもつパワーと影響力は計り知れない。この展示が証明してくれた気がする。

キーティング敦子

展示内部の写真はここをご覧ください。

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